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スペースワーカーズ制作秘話【戦略・プロデュース編】 初のプロポーザル採択の裏側──企画はどう動いていたのか

記事執筆:maki Abe

2026年3月、京都府の綾部市天文館パオに導入された新コンテンツ『スペースワーカーズ』。TREE Digital Studio(以下、TREE)にとって初のプロポーザル(企画提案)案件となった本プロジェクトは、いかにして実を結んだのでしょうか。

今回は、プロジェクトを牽引した新井 遼太郎さん(プロジェクトマネージャー)と、コンセプト立案/企画監修/キャラクターデザインを担った岡村 靖弘さん(クリエイティブディレクター)の二人に、企画から実装に至るまでの過程をインタビューしました。

■綾部市天文館パオに誕生した「宇宙での職業体験」

京都府綾部市にある「綾部市天文館パオ」は、国内最大級の反射望遠鏡を誇り、30年以上にわたり愛されてきた天文台です。ここで2026年3月からスタートした『スペースワーカーズ』は、宇宙船のクルーとして未来の宇宙空間で任務を遂行する体験型コンテンツ。
「宇宙を舞台にしたシミュレーションゲーム」という綾部市からの自由度の高いお題に対し、TREEはなぜ“職業体験”という切り口を提案したのか。その舞台裏に迫ります。

■プロポーザルという新たな挑戦

──まずは今回プロジェクトマネージャーを務めた新井さんにお伺いします。そもそも今回はなぜ、プロポーザルから挑戦しようと思ったのでしょうか。

新井さん:これまでも代理店経由で部分的に制作を請け負うことはありましたが、どうしても『もっと上流から関わっていれば、こうできたのに』というもどかしさを感じることがありました。ならば、自分たちが主体となって企画から挑戦してみようと。今の事業部に異動して2回目のプロポーザルへの挑戦でしたが、今回はその想いが形になりました。

──案件自体も新井さんが見つけてきたそうですね。

新井さん:はい。以前在籍していた新規事業開拓を行うBusiness Developmentという事業部で、パオさんの公募を見つけました。実はそれ以前、全く別の案件で初めて入札に挑戦した際は採択に至らなかったのですが、その経験から『自分たちにもできそうだ』という手応えは掴んでいたんです。過去にも宇宙系のコンテンツを制作した経験があったため、その時のデザイナーやプログラマーを招集し、最初から知見を持ったチームで臨めたのが強みでした。制作期間中も頻繁にパオさんとやりとりをして細かな要望を吸い上げ、チームで即座に共有・判断するサイクルを徹底しました。

■CM業界の視点を「天文館のコンテンツ」に持ち込む

──続いて、クリエイティブディレクターとして監修された岡村さんにお話を伺います。普段はブランディングやCMを手がけていますが、今回の依頼を受けた時はどう感じましたか。

岡村さん:普段の仕事同様、まずターゲット視点と競合内における差別化を考えました。プロポーザルを落札するためには、競合がやっていない、ユニークな切り口が必要だと考えました。ターゲットは子どもたちですが、彼らは好奇心の塊であると同時に、非常に“リアリスト”でもあります。例えば、“おもちゃのスマホ”では納得せず、本物を触りたがる。だからこそ、よくある“敵を倒すシューティング系”の乗り物(ライド)ではなく大人のようにリアルに“働く”という設定にしたほうが、没入感とともに宇宙に対して現実的な興味を持ってくれるはず、と提案しました。

岡村さんのアイデアメモより抜粋

──「防衛」「宅配」「掃除」という3つの仕事を選んだのはなぜでしょうか。

岡村さん:『防衛』は宇宙らしい王道の体験ですが、残りの2つには日常の延長にあるリアリティを込めました。『掃除』は、私自身も関心があった『宇宙ゴミ(スペースデブリ)』の問題をテーマにしています。また『宅配』は、今の子どもたちにとって“配送サービス”はとても身近な存在です。自分たちの日常と繋がっていると感じられるテーマの方が、好奇心を引き出せると考えたんです。

■案内役のキャラクターは不可欠、「パオット」誕生秘話

──オリジナルキャラクター「パオット」の誕生秘話を教えてください。

岡村さん:子どもたちが世界観に入り込めるよう、最初から案内役のキャラクターは不可欠だと考えていました。宇宙系の映画に出てくるような相棒的なイメージですね。提案当初は『AYABEE(あやべー)』という仮称でしたが、最終的に天文館パオの名にちなんで『パオット』と名付けました。キャラクターがいると親しみやすさも出てグッズ展開もしやすく、体験が終わった後も家庭で思い出してもらうきっかけになりますから。

──綾部市のマスコット「まゆピー」も登場しますね。

岡村さん:実は当初の計画にはなかったのですが、制作進行の中で登場が決まりました。結果としてパオットの素晴らしい相棒になってストーリーにも変化が出て、大正解でしたね。

パオットの初期ドラフト

初期の構想では、綾部市にちなんで“AYABEE(あやべー)”でした。

■こだわりの「3人協力プレイ」

──筐体を3人用にしたのには理由があるんですか?

岡村さん:『みんなで協力して任務を遂行した』という記憶に残る体験にしたかったんです。1人だけがレバーを動かしても船体は少ししか傾かないけれど、3人で息を合わせると大きく動く。物理的に協力が必要な仕様にこだわりました。

新井さん:完成後、現地で驚いた光景がありました。3人用の筐体に、なんと8人くらいの子どもたちが群がって、プレイヤーの3人以外のみんなも一緒になって遊んでいたんです(笑)。制作者として、ユーザーが楽しんでいる姿を直接見られるのは本当に嬉しいこと。どのモードを選ぶかで子どもたちが少し揉めるのも、また一つのリアルなコミュニケーションですね。

■「クリエイティブ集団」としての新たな一歩

今回のプロジェクトは、単に一つのコンテンツを納品したという以上に、TREEの制作スタイルそのものをアップデートさせる挑戦でもありました。全工程を自社主導で完結させたことで見えてきた「手応え」について、2人はこう振り返ります。

新井さん:企画から納品まで、すべてのプロセスに関わったことは自分にとっても、TREEにとっても大きな一歩でした。自分たちのアイデアが、物理的な作品として出来上がっていく過程には、これまでにないワクワクがありました。何より、これまで培ってきた自社の技術力を、自分たちの企画で活かせたことが最大の収穫です。

岡村さん:これまでのTREEのインタラクティブコンテンツ制作は、既にあるアイデアや企画をハイクオリティに形にしていくことが多かったですが、今回のプロジェクトを通じて、ゼロからアウトプットまでを一気通貫で完結させる『クリエイティブ集団』へと進化したと感じています。もともと持っていた高い技術に企画力が加わることで仕上がりイメージを共有しながら並走でき、さらに提供するコンテンツのクオリティが上がっていくんじゃないかなと思います。私自身にとっても、体験型コンテンツの可能性を再発見できる貴重な経験となりました。

 

コンセプトや企画の上流から関わり、クリエイターの情熱をダイレクトに形にする。そんなTREEの挑戦は、子どもたちの未来に、より深い「体験」の記憶を刻んでいくはずです。
こうした「一気通貫」の制作スタイルは、単なるコンテンツ提供に留まりません。独自のストーリー設計やキャラクター開発を軸にすることで、商業施設やイベント会場における集客・回遊性の向上、さらにはブランドへの深い愛着形成など、販促・イベントに活かすことができると考えています。

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ライタープロフィール:maki Abe
「伝えたい想いやストーリーを、伝わる形に編集する」をテーマに、企業の広報PRからSNS運用、コンテンツ制作まで幅広くディレクションを担当。社会性の高い領域(教育・福祉・地域活性など)を得意とし、情報を作るだけでなく、届けるまでのコミュニケーションデザインを強みとする。趣味は7歳児1人&ねこ2匹を愛でること。

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