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岩沼市「miiina」――ボールプール×最新デジタル技術で実現した「何度でも夢中になれる」空間作りと、開発チームの舞台裏

記事執筆:久保木たけし

2026年6月19日にオープンした宮城県岩沼市の子どもの遊びと交流基地「miiina(ミイナ)」。
元々は「ハナトピア岩沼」というレクリエーション施設だった場所を改修した同施設において、屋内「キッズ飛行船エリア」のボールプールに導入されたのが、壁面の映像がインタラクティブに変化するデジタルコンテンツです。

本プロジェクトの企画・制作からシステム構築までをワンストップで手掛けたのが、TREE Digital Studio(以下、TREE)のREALIZE事業部でした。

猛暑や積雪といった気候に左右されず、子どもたちが全身で遊べる空間へのニーズが高まる中、開発チームはいかにして屋内施設を最大限に活かした、”何度でも楽しめる遊び場”という難題に応えたのか、約半年という短期開発の裏側にあった試行錯誤を紐解いていきます。

「飽き」の壁を打ち破る多様なアイデアと企画力

クライアントからの「何度でも夢中になれるコンテンツ」というオーダーに対し、企画・ディレクションを担当した藤木 秀作氏は、全く性質の異なる3つのアプローチを用意しました。

壮大な空を旅しながら協力してクリスタルを集める「みんなで冒険ワンダーフライト」、15〜30秒の短時間で遊べる7種類のミニゲーム集「みんなのパーティーゲーム」、そして待機時間でも地域性を楽しめる「わくわく岩沼マップ」です。

藤木氏「デジタルコンテンツは、繰り返し遊んでいるうちにどうしても結果が予測できるようになってしまう懸念があります。
そこで、コンテンツの企画を考える中で、遊ぶ度に違う結果が生まれ、いつでも新しい発見や驚きを感じられる体験設計を目指しました」

特に「みんなで冒険ワンダーフライト」と「みんなのパーティーゲーム」には、リアルタイムの物理シミュレーションが組み込まれています。

藤木氏「積み木の上にクリスタルが乗っていたり、ロープにぶら下がったタイヤがあったりするのですが、ボールを当てる場所によって毎回崩れ方や動きが変わります。毎回違う結果が出ることで、子どもたちの『こう当てたらどうなるんだろう?』という好奇心や物理的な探究心をくすぐり、結果的に、繰り返し遊びたくなる意欲を引き立てられたと感じています。」

しかし、その「夢中にさせるゲームバランス」を見つける作業こそが、最も困難な道のりだったといいます。

藤木氏「遊びが簡単すぎても難しすぎてもいけないし、仕掛けにこだわりすぎてどこにボールを当てればいいのかわかりづらくなってもいけません。自社のスタジオにプロトタイプを設置し、スタッフみんなで実際にボールを投げながら、難易度やゲームのプレイ時間、ボールが当たったときの気持ちよさなどを細かく検証し、最適化していきました」

みんなで冒険ワンダーフライト

みんなのパーティーゲーム(ロケットジャンプ)

みんなのパーティゲーム(モグラたたき)

わくわく岩沼マップ

子ども向けの世界観とリアルの狭間で葛藤したデザインと進行管理

どんなに優れたシステムでも、遊び方が伝わらなければ子どもは離れてしまいます。
デザイナーの兵庫 瑞姫氏は、「現場スタッフが付きっきりで説明しなくても遊べるUI」を徹底的に追求しました。

兵庫氏「ゲームが始まる前に、『ここにボールを当てよう』とイラストとひらがなのルビ付き文字で提示し、直感的にルールがわかるように工夫しました。また、ボールプールの手前にいる子どもの身長や目線を考慮し、スコアの表示やボスを倒したときの加点演出などは、ボールと被らないように配置しています」

一方で、「わくわく岩沼マップ」の制作においては、自治体案件ならではの産みの苦しみがありました。
プロジェクトマネージャーの川﨑 小太郎氏は、地方自治体とのやり取りにおける特有のハードルをこう語ります。

川﨑氏「自治体案件ならではの安全基準や厳密な申請プロセスがあり、普段とは少し違った進行管理が必要な場面も多々ありました。しかし、担当者様の『絶対に良い施設にしたい』という熱意のもと、密に連携を取り合う中でひとつのチームになれた実感がありました」

この熱意はデザイン面でのこだわり抜いた調整にも繋がっています。子ども向けのポップな世界観を作りたいデザイン側に対し、岩沼市からは「もっと現実に寄せてほしい」というフィードバックが何度も寄せられていました。

兵庫氏「現実の形状から離れすぎず、かつ子ども向けのポップさを失わないよう、リアリティとデフォルメのバランス調整を重ねました」

世界観とリアルさを両立させたマップのBefore(左)/After(右)

トライ・アンド・エラーの実機検証と、チーム連携が支えた実装

今回のプロジェクトは2025年11月のスタートから2026年5月の納品まで、与えられた開発期間は実にわずか半年というタイトなスケジュールでした。エンジニアの金髙 遥氏は、この短期間での実装を次のように振り返ります。

金髙氏「コンテンツを3つ作り、システムも構築し、要素も多い。これを短期スパンで実現するために、既存システムを応用しました。システム開発の時間を短縮し、目玉となるコンテンツ自体の体験価値向上に時間を費やしました。『これをやってみたい』という多様な企画に対しグレーボックス(試作)の検証を繰り返したことが本当に大変でした」

システム構築の裏側では、後々の運用や視覚的な美しさを見据えた緻密な配慮が行われていました。
エンジニアの阿部 みのり氏は次のように語ります。

阿部氏「将来の仕様変更を先読みして、後から調整しやすい設計を心がけました。また、『ランダムにして』という指示に対しても、ただ数値をランダムにするのではなく、人間が見て綺麗に散らばっていると感じるように実装するなど、言葉の裏にある理想の見え方に近づけることを意識しました」

その他にも、阿部氏らによる、手の空いた時にエンジニア側でできるデザイナーの作業を巻き取るといった職域を超えた連携が、短納期での実装を強力に支えた要因と言えます。
そして、このプロジェクトでクライアントから最も感謝された機能の一つが、金髙氏らが構築した「スマートフォンによる運用システム」でした。

金髙氏「昨今、PCの電源を入れて操作することに抵抗があるオペレーターの方が増えています。そこで、スマホからの操作のみでシステムやプロジェクターの起動・終了、コンテンツの切り替えが完結するシステムを開発しました。最終の引き渡し時にご担当者様に説明したところ、『PCを1個1個立ち上げてどうにかしなきゃいけないのかと思っていたので、すごく助かります』と、非常に安心していただけました」

クライアントの声:「毎日違う体験ができる」施設の目玉へ

地道な試行錯誤の末に完成した本コンテンツは、岩沼市からも確かな評価を得ています。
宮城県岩沼市の政策部 まちづくり政策課 企画創生係長である岩本 創太郎は、今回のプロジェクトの成果を次のように語ります。

岩本氏「デジタルコンテンツなどを通じて、いつ来ても違う楽しみがある遊び場を実現したいと考えていました。今回制作いただいたコンテンツにおいては、物理シミュレーションが採用されることにより同じ動きが出力されることがないことや、大人数が参加できることにより、そういった『毎日違う体験ができる』遊び場となったと思います」

実際の利用状況についても、「イベント開催時はたくさんのお子様に参加いただいており、miiinaのあそびばにおける目玉の一つになっていると感じています」と手応えを口にし、「引き続き、たくさんの方に体験いただきたい」と期待を寄せています。

総合力が生み出す「安全で質の高い体験」

「子どもが飽きない」という抽象的なオーダーに対し、TREEのREALIZE事業部は物理演算によるランダム性、直感的なUIデザイン、そして高い信頼性と運用性を備えたシステムという具体的な解決策を提示しました。
プロデューサーの益子 篤氏は、本プロジェクトで提供できた同社のコアバリューを次のように総括します。

益子氏「TREEが長年培ってきた『ハイクオリティな映像表現(CG制作)』と、REALIZE事業部が得意とする『最新のセンシング技術』を高い次元で融合させることができた点です。企画立案からデザイン、システム開発、現場での実装までをワンストップで提供できる総合力こそが、子どもたちが全力で遊んでも安全で、なおかつ質の高いエンターテインメント体験を実現できた最大の理由だと考えています」

プレオープンの撮影で自らの子どもたちを遊ばせた益子氏は、時間を忘れて無邪気に遊ぶ姿を目の当たりにし、プロデューサーとしての強いやりがいを感じたといいます。

岩沼市「miiina」の事例は各分野のプロであるスタッフが緊密に連携し、単なる発注・受注の関係を超えてクライアントとひとつのチームになることで生み出されました。
この取り組みは、企画・技術・現場運用までを一気通貫で手掛けられる同社の圧倒的な総合力を示す確かな実績といえるでしょう。

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ライタープロフィール:久保木たけし
フリーランスライター。企業へのインタビューを中心に、製品開発の背景や経営思想を取材。徹底したヒアリングに基づき、読者の知的好奇心を刺激する記事を執筆中。

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