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スペースワーカーズ制作秘話:【テクノロジー・クラフトマンシップ編】理想を形にする執念──リアルな宇宙体験を支える「超精細デジタル」と「こだわりの筐体」
記事執筆:maki Abe
2026年3月、京都府の綾部市天文館パオに誕生した新コンテンツ『スペースワーカーズ』。本作は宇宙船のクルーとして未来の任務を遂行する「宇宙での職業体験」をテーマにしており、国内最大級の反射望遠鏡を誇る同館の新たな目玉として注目を集めています。
この記事では、この壮大なビジョンを現実の体験へと落とし込んだ二人のプロフェッショナルが登場します。Unreal Engineを駆使して圧倒的な宇宙空間を構築したTREE Digital Studio(以下、TREE)の山本 秀樹さん(エンジニア/デザイナー)と、コンセプトカー制作の技術を惜しみなく注ぎ込み、子どもたちが夢中になる「本物のコックピット」を作り上げた村上商会の星宮 祐樹さん(筐体制作担当)の二人に、『スペースワーカーズ』を支えるテクノロジーとクラフトマンシップについてお聞きしました。
■プロポーザルによって実現した「一気通貫」のモノづくり
──まずは、今回プログラムワークを担当した山本さんにお聞きします。TREEではこれまでにも宇宙関連のプロジェクトを多く手掛けてこられましたね。
山本さん:はい。大阪・関西万博の関連プロジェクトや、岐阜かかみがはら航空宇宙博物館などにコンテンツを納品してきました。今回の制作チームも、その時の知見を持ったメンバーが中心になっています。
──今回はプロポーザル方式でしたが、これまでの案件と違いはありましたか?
山本さん:過去の案件で蓄積した表現の知見はありましたが、これまではクライアント様から『こうしてほしい』という明確な企画をいただいて形にするのが主でした。今回のように、企画・設計から納品まで一貫して行うというのは、大きなチャレンジでしたね。
──山本さんご自身は、どのような役割を担ったのでしょうか。
山本さん:主にプログラムの実装を担当しました。クリエイティブディレクターの岡村さんのアイデアを実現し、コンテンツとして動かすための設計をし、必要な素材を制作していく工程です。ここまで大規模な案件を設計から実装まで一人で組み立てる機会は貴重で、私にとっても非常に刺激的な経験でした。普段はグラフィック面を担当することが多いのですが、今回は立体音響の調整など、音の出し方についても深く関わり、非常に勉強になりました。
■「3人協力プレイ」を支えるエンジニアの裏側
──山本さんは主にプログラムの実装を担当されましたが、特にこだわった点はどこでしょうか?
山本さん:やはり『3人で協力して遊ぶ』ことへのこだわりです。3人でやるからこそ、誰かが操作に迷ったり、極端な動きをしたりと、想定外の事態が起こりやすくなります。なので、例えば『上に説明が出たら分かりやすいよね』といった細かなUIの工夫を、岡村さんと何度も意見交換して詰めました。また、今回は視覚だけでなく、音や振動によるフィジカルな体験にも新しく挑戦しています。スピーカーの配置や音の出し方を調整し、機体が動く際の振動をどう伝えるか。没入感を持って遊んでもらうためのエンジニア目線での新しい試みが詰まっています。

「操作が必要な時には必ず説明を出す」という方針はクリエイティブディレクターとの協議で決定
──子ども向けのコンテンツということで、開発段階での検証も大変だったのでは?
山本さん:そこが一番の山場でした。子どもたちの行動を予測するのは難しく、テストプレイでは、あえて無茶苦茶な操作をしたり、ボタンを連打したりすることで、『どうすればエラーを吐かずに、かつ楽しさを損なわないか』を検証し、デバッグを繰り返しました。タイトなスケジュールの中でしたが、『何が起きても安定稼働させる』という点には一切妥協しませんでした。
■コンセプトカーの技術を「子どもたちの夢」に転用する
──続いて、筐体制作を担った村上商会の星宮さんにお伺いします。今回のお話があった時、率直にどう思われましたか。
星宮さん:私たちは普段、モーターショーに出展されるコンセプトカーなどのショーモデルを制作しています。今回は宇宙船のコックピットということでしたが、『人が乗り込んで操縦する』という観点では、車と共通する部分が多い。私たちの得意分野を活かせる案件だと直感しました。
山本さん:社内会議で『このコンテンツの筐体を作れるのは星宮さんしかいない』と満場一致で声が上がったんです。星宮さんとは長年、信頼関係を築いてきましたから。
──星宮さんは、どのような体制で制作に臨まれたのですか。
星宮さん:10人ほどのチームで、企画・デザインから設計、部品の製作、現地での荷上げまでトータルで担当しました。特に『安全性』には細心の注意を払いました。子どもたちが触れるものですから、部品が外れたり指を挟んだりというトラブルは絶対に許されません。どう座って、どこを触り、どう降りるのか。何度もシミュレーションを重ね、ミリ単位の調整を行いました。
■注目ポイントは「平面を立体に見せる」背面のデザイン
──筐体のデザインで、特にこだわったポイントを教えてください。
星宮さん:一番見てほしいのは、実は『背面』のデザインです。施設の入り口から見ると、最初に目に入るのが筐体の後ろ姿なんですよ。そこで、ラインを光らせたり、内部のエンジンが透けて見えるかのような精細なシールを貼ったりと工夫を凝らしました。設置スペースの問題で平面にする必要がありましたが、平面でも奥行きを感じさせる仕上げにすることで、プロの目で見ても納得感のあるクオリティを実現できた自負があります。
山本さん:星宮さんの筐体が出来上がっていくにつれ、ソフト側の演出もどんどん引っ張られていきました。外部パートナーという垣根を超え、一つのチームとして限界まで高めたクオリティであり、作り手でありつつ、自分たち大人のプロフェッショナルが真剣に考え、真剣に楽しんだクオリティになっていると感じています。
■プラットフォームとして進化し続ける未来
──この筐体には、今後の可能性も秘められているそうですね。
星宮さん:はい。パーツの取り外しが可能な設計にしており、部分的なリニューアルやメンテナンスがしやすい作りになっています。例えば中身を潜水艦に変えて水族館に設置するといった、別のコンテンツへのモデルチェンジも可能です。
山本さん:そうですね。この筐体とシステムを一つのプラットフォームとして、これからも子どもたちの未来への好奇心を刺激する新しい体験を作り続けていきたいです。
今回、TREEのメンバーや星宮さんが情熱を注いで制作したこの筐体は、その高い汎用性から、さまざまなイベントや施設への展開が可能です。単なる「遊び」を超え、教育やブランディングの価値を最大化する体験型コンテンツの導入は、集客や顧客満足度の向上、さらには施設への愛着形成に新たな可能性をもたらすでしょう。
また、本プロジェクトの舞台裏を追ったもう一つの記事「戦略・プロデュース編」も公開中です。こちらでは、プロジェクトマネージャーの新井 遼太郎さんとクリエイティブディレクターの岡村 靖弘さんが、初のプロポーザル案件をいかにして勝ち取り、独創的な「宇宙の職業体験」というコンセプトを練り上げたのか、その思考のプロセスを詳しく語っています。本記事とあわせてぜひご一読ください。
【戦略・プロデュース編はこちら】
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ライタープロフィール:maki Abe
「伝えたい想いやストーリーを、伝わる形に編集する」をテーマに、企業の広報PRからSNS運用、コンテンツ制作まで幅広くディレクションを担当。社会性の高い領域(教育・福祉・地域活性など)を得意とし、情報を作るだけでなく、届けるまでのコミュニケーションデザインを強みとする。趣味は7歳児1人&ねこ2匹を愛でること。
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